「斬」第六太刀「勝ち?負け?」 〜杉田先生は偉大です〜


いやー、今週の「斬」は凄かった。


まあ突っ込んで面白おかしく取り上げようとすれば、いくらでもできるんですが
(例:ちょwwwなんだよ「左が全身」って!!左半身って書けよすぎたん!!)


今回は敢えて斬紳士っぽく、褒めちぎりまくってですね。すぎたん…いや、杉田先生(すいもあまいもわかった46歳の剣術使い)としてリスペクトしてみましょう。

・・・まあ、無理やり褒めちぎっている感があるけど(w

(1)165ページ〜166ページ
「上空から襲いかかる貫木の攻撃を、虫が顔に止まったおかげでやりすごせた斬」


一見するとこのシーン


「ちょwwwなんだよこれ、ラッキーマンかよ!!」


と突っ込むことしか出来ません。
しかし、こうは考えられないでしょうか。


「虫の正体は、死んだ斬の父親
村山斬ノ介が生まれ変わった姿だった!!」


こう解釈すると、意味合いがガラリと一変します。
そう、虫は、上空からの貫木の攻撃に、まったく気がつかない息子を助けるために、斬の顔に止まったのです!!

つまり、斬がラッキーで貫木の攻撃を受け止めたように見えますが、その裏には親子の熱いキズナが隠されていたのです!!


杉田先生は偉大です。杉田先生は偉大です。


(2)167ページ
「斬に攻撃を跳ね返され、上空に舞い上がりながら解説する貫木」


一見するとこのシーン


「ちょwww貫木滞空時間長すぎ!!舞空術かよ!!」


と突っ込むことしか出来ません。
しかし、こうは考えられないでしょうか。


「実は貫木はまだ上昇中」


貫木が止まっているように見えますが、それは一瞬の場面を描いたからであって、実際はまだまだ上昇しているはずです。

だから貫木もあんな説明口調が口走れるし、その後の斬が貫木に追い討ちをかけるシーンに入るまでの長いタイムラグも、これで解決です!!

それを可能に出来るのは、斬の類稀なる超怪力!!

杉田先生は、ここでも斬のバカ力ぶりを見せ付けて、読者に「斬=力持ち」の印象をすり込もうとしているのでしょう。

そして、何故何度も斬の怪力シーンを見せ付ける必要があるのカと言うと、斬の見た目がもやしっ子だからです。


もしも斬の外見が「アイシールド21」の栗田みたいな外見だったら、ここまで怪力ぶりを見せ付ける必要はありませんよね。
見ただけで力持ちだと分かるのだから・・・。

見た目がもやしっ子ゆえに、何度も怪力シーンを見せ、斬の長所をアピールしないといけないのです。


杉田先生は偉大です。杉田先生は偉大です。


(3)167ページ6コマ目〜171ページ
「虫に追いかけられた斬がタイルにつまづいた拍子に貫木に追い打ち!屋上から転落する貫木」


これも一見すると


「なんだよまたラッキーマンかよ!!
今週のネーム、大場つぐみガモウひろし)が描いたんじゃねーのか!?」


と突っ込むことしか出来ません。
しかし、上記の2つの考察を踏まえると、このシーンでも別の考え…杉田先生の真意が見えてくるのです!!


まず、斬が貫木に追い討ちをかける前のシーンを振り返ってみましょう。


 貫木の攻撃をやり過ごした斬は「で、でもどうしよう、もうどうしていいか全然わかんないし…」と、攻撃を跳ね返したことで精一杯で、これからのことをまったく考えられない状態です。

 すると、さきほど斬の顔にくっついた虫が、顔に付いてたのを追い払われたからか、プンプン怒っています。それを見た斬は一目散に逃げ出しますが、虫は斬の後を追いかけるようにすっ飛んで行くのでした。


ここで、(1)で挙げた「虫の正体は、死んだ斬の父親が生まれ変わった姿」という仮設をあてはめてみると…。こう考えることが出来るのです。


「虫が追いかけてきたのは、息子・斬のふがいない態度を戒めるためだった!!」


 虫が追いかけてきたのは、顔に止まっていたのを追い払われたから怒っているんじゃありません。

 虫(父親)は、貫木に上空から襲われそうになったのにスキだらけだったり、攻撃をやり過ごしたのに「どうしていいか全然わかんない」などと、弱気な息子の、武士道精神のカケラもない、軟弱な言動・態度が許せなかったのです!!


「何だと!!真剣勝負の戦いのさなかでは
最後まで気を抜いてはいけないのだ、わが息子よ!!」


 きっと、こんな感じで父親は怒っているのでしょう。


 そして虫(父親)は斬を追いかけるのですが、この時、貫木の落下地点にあわせて斬を追い込むように仕向けていたあたりに、厳しいながらも優しい、父親の良心が感じられます。

 なお、虫が飛行中に「ドラゴンボール」や「テニスの王子様」みたいに、飛びながらオーラを発しているのですが、

これはおそらく「この虫はただの虫じゃないんだぞ」という、杉田先生の分かりやすい伏線に違いありません。


 また、このシーンに至るまでにずいぶん時間がかかっているように思えますが、(2)で指摘した「貫木はまだ上昇中」というポイントを当てはめることで、このシーンまでのタイムラグをきっちり埋め合わせることが出来るのです。さすが杉田先生、抜け目がありません。


 …そして虫に追いかけられた斬は、屋上のタイルにつまづいた拍子に、貫木に追い討ちをかけることに成功します。


 …まあさすがに「タイルにつまづいた」という行為は、斬のラッキーによるものだと思います。ただし、虫がここまで斬を追い立てなかったら、ここまでのラッキーは起こりえなかったんですけどね。


 しかし、我らが杉田先生は信じられないことに、なんと先週の時点で、この「斬がタイルにつまづく」という事を予告していたのです!!


 ここで、先週の杉田先生の巻末コメントを振り返ってみましょう。

「いつもボーっとしているせいか
一日5回以上は色んなところにブ
ツかります。凄く痛いです。<尚> 」


 もうおわかりですね。


「色んなところにブツかる」=「タイルにつまづく」



 そう、この巻末コメントは、今週の「斬がタイルにつまづく」シーンの予告だったのです!!


 杉田先生を7歳の「ようじょ」だと信じて疑わない一部の読者が、「ドジっ子すぎたん(;´Д`)ハァハァ」などと萌えていたその裏では、

巻末コメントという適当な場面でも気を抜かない、杉田先生の漫画にかける情熱が込められていたのです!!


杉田先生は偉大です。杉田先生は偉大です。



 そして斬が貫木に追い討ちをかけた後、虫は去って行きます。これもおそらく虫(父親)は、


「よくやったな、息子よ…」


 などと、息子の成長を見届け、去って行ったという、心温まるシーンを描いているのです。おそらく今後斬がピンチになるたびに、この虫は現れることでしょう。父親として。


(4)173ページ6コマ目〜174ぺージ
「カギヅメで屋上にしがみつく貫木が「殺せ」と斬に言い出すが、逆にカギヅメを掴んで振り上げて、貫木を救い出す斬」


一見するとこのシーン


「ちょwwwガキヅメの紐が手すり貫通してるってばよ!!」


と突っ込むことしか出来ません。


 しかし、この理不尽なシーンにも、杉田先生の別の意味が込められていることは、もう明白ですね。


 まずは先ほども指摘した「斬か怪力であることを見せ付ける」…。たしかにコレもあります。

まあ、斬は見た目もやしっ子ですからね。何度も怪力のイメージをすりこませないと、なかなか読者は分かってくれませんからね。このあたりに杉田先生の丁寧な心遣いが伺えます。


 そして問題の「ガキヅメの紐が手すりを貫通している」という疑問ですが、これはおそらく…。


研無刀による必殺技を編み出すための伏線」


 ではないかと推測されます。


 おそらくこの先、強敵との戦いで、斬がピンチに陥る場面が出て来るでしょう。タイミングよくもうひとりの斬が助けてくれるとも限りませんし、力に任せて研無刀をブンブン振り回すのにも限度がある。そういえば斬が見よう見まねで「居合い抜き」の構えを見せたシーンがありましたっけ。

 おそらくそんな時に、先ほど斬のピンチを救った虫(オヤジ)がまた現れて、こんな事を斬に伝えるはずです。


「思い出せ我が息子よ!!
瀕死の友を屋上から救い上げた時の事を思い出すがいい!!」


 そしてそれを指摘された時、初めて斬は気づくのです。

「そ、そうか!!あの時、貫木君を引き上げた時…
カギヅメの紐が柵を貫通していたじゃないか!!」


そう。そこに新必殺技のヒントがあったのです。心を無にしてただ一点の事に集中することで、研無刀は真の力を発揮する――!!


それに気づいた斬が必殺技で一発逆転。見事強敵を撃ち倒したのでした。ちゃんちゃん♪


「ありがとう、父ちゃん…!!」


うん。間違いない。きっとこういう感動的なシーンの伏線に違いないね。


ちなみに、「コミックバンチ」で昔連載されていた「青狼記」って作品(原作・脚本:楡 周平 漫画:長谷川 哲也)の中で「水殻流」(すいかくりゅう)って剣術の技が出てきます。

 うろ覚えですが、たしか「鎧をすり抜けて体のみ斬りつける」という必殺剣だったはずです。


 たぶんこの時、斬が編み出す必殺技も、この「水殻流」によく似たワザじゃないかと思われます。

 だからこそ「ガキヅメの紐が手すりを貫通する」シーンが生きるわけですね!!


杉田先生は偉大です。杉田先生は偉大です。



まあ、あんまり長く書くのもアレですので、この後のシーンは割愛させていただきますが、この後のシーンでも、きっと杉田先生なりの深い意味が込められているのでしょう。


貫木のウンチングスタイルとか、ブサイクな女子生徒が今更事情を説明するところとか、貫木のツンデレシーンとか。


今回はコレで終わらせていただきますが、
やはり杉田先生はただ者ではないと確信したKAJIMEなのでした。