この「バレンタイン心中」は「クリスマス心中」「セーラー服心中」と肩を並べる、山崎みちよ先生「心中シリーズ」三部作のひとつです。
少女マンがなのにありえないセリフ、なんだか熱い脇役。とことんまでどん底に突き落とされる主人公、主人公達に巻き込まれて必ず誰かが死ぬFFばりの死にまくり展開、などなど…。突っ込みだしたらキリがない、独創的な世界観がたまらない作品です。
2年前くらいに「心中シリーズ」紹介されて取り上げてみたら、なんだかとっても面白かったのですが、書きかけのレビューを見つけたのをきっかけに読み返したら、やっぱり面白かったので、目いっぱい書き直して、再びお送りします。
「バレンタイン心中」の主人公は、講談建設の社長の娘「岡春菜(おか はるな)」。幼馴染で政治家の息子「松本尚樹(なおき)」に、バレンタインデーに渡すチョコを、そいつの妹である「冴子(さえこ)」といっしょに選んでいるところから始まります。
周りからはお似合いのカップルだねーなどとはしゃがれていますが、春菜自身は、内心では尚樹くんのことはキライじゃないけど、なんかときめかないなーとか思ってるわけです。
でもそんな心の内は、彼の妹であり春菜の親友でもある冴子には言えやしねーなー…などと思っているわけです。
さて、そんなある日 夜おそく冴子とともに家路へと向かう春菜。すると突然冴子が「ここら辺においしいケーキ屋があるの、買って行かない?」と、勝手に横道に入ってしまいました。
後を追っかける春菜が出くわしたのは、恐ろしく治安の悪そうな路地。そして春菜はいきなりDQN2人組にからまれます。
すげー。なんか鼻ピアスしてるよ。しかもなんか耳と連結!!
少女マンガなのに、まるで梅澤ワールドみたいなDQNです。
なんだかDQN描写が無駄に力入り過ぎ。
そんなDQNたちに、いまにも襲われそうになる春菜ですが、すんでのところでひとりのロン毛金髪兄ちゃんが現れて、DQNたちを追っ払ってくれました。
「ばかやろう!ここがヤバイとこってことぐらい
あんただってわかんだろ!?これから気をつけろ」
しかしこのとき、男の視線と目が合った春菜は、それまで感じたことのない、ドキドキを感じてしまうのでした。
(――どうしてだろう…彼の目に射すくめられて、身動きできなかった―――)
その後冴子と合流した春菜の前に、尚樹が登場。春菜がDQNに絡まれたと聞いて、尚樹は春菜を家まで送っていくと言い出すのですが、それを見送る妹の冴子は、なぜか嫉妬の表情を…。
…そう、実はこの2人、ホントはデキてました。
ラブホで尚樹が「愛してるのは冴子(オマエ)だけだぜ」とかほざいてます。
尚樹が春菜と親しくしているのは、春菜が大企業の社長の娘だからという政略的・ビジネスライクな理由であり、本心から愛しちゃいなかったのです。
冴子は冴子で、表向きは春菜と仲良くしてて、尚樹と春菜がくっつくのを支持してますが、実は誰よりも尚樹に惚れており、内心では「あんなけがらわしい女(春菜)なんかにっ…!!」とか思っているわけです。兄妹揃ってなんてイヤミな…。
…って待て。この2人、たしかに兄妹のはず。
なのに…おいおい、平気でラブホとか入ってるぞ!?
なんという近親相姦!!いいのかこれって。
さて、DQNから春菜を助けてあげたロンゲの男が自宅に帰ってくるシーンに。彼の名は間綾(はざま りょう)。
春菜の父親である岡が社長の「講談建設」で土木作業員として、父親と一緒に働いています。
ちなみにそこでは1日15時間労働とかがザラだという、過労死っていうレベルじゃねーぞ!!って勢いのデンジャラスな労働状況です(w
そんな綾の耳に、職場仲間の源さんが大ケガをして解雇(クビ)になったという知らせが入ったので、慌てて向かってみると、源さん、見事なまでの大ケガを負っており、見てるだけで痛々しい姿…。
明らかに手足の骨とか折れまくってて、普通なら労災が降りようもんですが、それすらもなくクビ!!まさに外道!!
「源さん!!どーいうことだよ!!
大ケガさせられた上に労災にもならずクビなんてっ、訴えろよ!!」
しかし源さんは暗い顔。ここら辺一帯は講談建設…岡パパンたちがすべてを仕切っており、ヘタに逆らったらここにさえいられなくなる、命が助かっただけでも幸いだ…と言うのです。
「ち…くしょう」
いても立ってもいられなくなった綾は、源さんの家を飛び出し…向かった先は岡の自宅。つまり春菜の家です。
この日は2月14日。奇しくもこの日は春菜の誕生日でもあり、家ではパーティーが開かれてます。そして春菜のパパン(岡パパン)はみんなの前で…。
「今日春菜が16になり、尚樹くんはもう18…
ここで、2人の婚約を発表させていただきます」
ちょwwwいくらなんでも唐突過ぎだよパパン!!
そういえば「セーラー服心中」でも、16歳と18歳で婚約させようという話が出てきてましたっけ。どうしてこの漫画の連中は若者をとっとと結婚させたがるのだろう。
もちろん春菜は寝耳に水。「ちょwwおまwww」とか言ってるうちに、突然綾が家に乗り込んできて「源さんのクビを取り消せや(゚Д゚)ゴルァ!」と直談判。
場違いな来客に岡パパンは「ここは雑魚どもの来るところじゃない!!」とつまみ出させようとしますが、ここで綾が服を脱ぎだして…!!
「クビを取り消せ!!
取り消さねーと、家もろともぶっ飛ばす!」
ダイナマイトキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!
持ってたライターに火をつけ、今にも体に巻いたダイナマイトに火をつけようとする綾。本気だ、ヤツは本気だ!!
しかしこれは見事なまでの少年誌テイスト。熱い展開です。
ダイナマイトを体に巻き付けて相手を脅すという手法は、たしかに「北斗の拳」のジャッカルや「男たちの好日」の黒須なども行ってきましたが…まさか少女マンガでこんなシーンが拝めるとは!!すげえよ山崎みちよ先生!!
そして、あまりにも凄すぎる超展開を前にして気付きにくいですが、過酷な肉体労働をしてる割には、綾の肉体がやけに貧相なところも高ポインツです。
胸板とか平坦すぎて、全然筋肉がねええええ!!
このコマの破壊力は、かなりのモンだと思います。
結局こんなムチャな事されたんじゃたまんねーぜと、岡パパンは源さんのクビをあっさり取り消して、めでたしめでたし。
そして一目惚れした相手が突然現れたので、春菜は思わず手作りのチョコレートを綾にあげてしまうのでした。つづく。