今ではすっかり鳴りを潜めた「コミックバンチ」ですが、創刊当初はまさに「黄金時代」でした。
城山三郎先生原作の同名小説を、ながいのりあき先生が大胆にアレンジした熱い経済漫画「男たちの好日」。
当時の暑苦しいバンチに萌えの花を添え、なおかつ深い話を作り上げた「ガウガウわー太」(現在は「コミックREX」にて続編「ガウガウわー太2」連載中)などなど…。
そして、新進気鋭(当時)の渡辺保裕先生が描く、「熱い」が100個ぐらいつくような、荒らぶる魂の野球漫画「ワイルドリーガー」。
ワイルドリーガー 1 (1)posted with amazlet on 07.03.23渡辺 保裕
新潮社 (2001/10)
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当時バリバリのバンチっ子だったKAJIMEの心を掴んで離しませんでした。
その「ワイルドリーガー」が、外伝の読み切りとして帰って来たッ!!
これはもう取り上げないわけには行かないゼ!!ってなわけで、ものすごーく久々にバンチ買ってきました(w
いやー、いい意味でも悪い意味でも変わってなくて、ある意味安心したぜ(w
さて、今回の読みきりは、 「京都スターズ」との11回戦。満員に膨れ上がった「東京武鉄レッドソックス」のホームグラウンド「武蔵野フィールド」で、ひとりの野球少年が、始球式を行うべくピッチャーマウンドに立つところから始まります。
ちなみに対戦相手の「京都スターズ」は、渡辺センセが「別冊漫画ゴラク」で連載していた野球漫画熱球時代に出てきたチーム名。
諸事情により実名球団が使えないので苦肉の策…といったところですが、思わぬところでの再登場にちょいと感激(w
なので、打席に立っているバッターも、見た目が似てることから、「熱球時代」に出てきた蕪木平(かぶらぎ たいら)選手だと思われます。
なんだかものすごく局地的だけど、嬉しいファンサービスだゼ!!
「しっかりな」
「少年よ、頑張るのだ!」
「ワイルドハンズ」の友部さん、「ロングトレイン」のガルさんに励まされ、ドキドキした面持ちで始球式を務めるのは、公認ファンクラブの「Rソックスキッズ」から抽選で選ばれた、武蔵野市の小学6年生・吉留彗介(よしどめ けいすけ)くん。
どっかで聞いたコトがあるなーと思ったら、実はこの少年、「ワイルドリーガー」の第1巻で、主人公の浅野夏門から、レッドソックスの野球帽に「男は黙ってレッドソックス」というサインをもらってた、あの少年でした。
ていうかオヤジのツラ見て思い出しました(w
そのオヤジは息子の彗介に熱い声援を送りつつ、周囲のファンに「私の息子なんですよ――ッ!!」などと自慢しまくっています。
まったく、とんだ親バカです。
しかしそんなオヤジとは裏腹に、彗介くんはある決意を胸に秘めていました。
野球少年である彗介くん。練習では調子がいいのに、試合になるとライバルチームに打たれてばかり。自分の限界を感じた彗介くんは、チームメイトに野球を辞める事を告げていたのでした。
しかし、その日の夜、自宅に始球式の当選通知が届きます。オアyジは息子が始球式に立つ事をまるで自分の事のように喜び、はしゃぐのでした。
「ボクのラストピッチが秋葉さん相手なんだ…
ボクはこれで満足だッ!!」
キャッチャー秋葉のミットめがけて、抜群のコントロールの投球を見せる彗介くん。ボールは「スパァン!」と心地よい音を響かせてミットに収まり、観客からは大歓声が送られます。オヤジもバンザイです。
(ふぅ―――っ、最後にいいボールが投げられて良かった……
これでボクの野球も終わりだ、さよなら野球…)
帽子を取ってペコリとお辞儀をし、満足の行く投球が出来て悔いのない表情を見せる彗介くん。そんな彼に秋葉が駆け寄り、記念ボールを手渡す…のかと思いきや…。
「ありがとうござ…」
「もう一球だ!!」
秋葉吠えた―――!!
「ピッチャーはキャッチャーの目を見て魂込めて投げろ!!
あーんな格好だけつけた様なボールじゃダメだっつーの!!」
そして「次はちゃんと投げろよな――ッ!!」と、
始球式のやり直しを要求!!
前代未聞の始球式やり直しに、スタジアムはどよめきますが「武鉄戦はこれだから…」などと言いながら、律儀に打席に立って構え直す蕪木は実に空気が読めてるなあ(w
そして、そんな蕪木とは対照的に、空気の読めない男が1人…。
ああ、やっぱり伊能は伊能だったか。
このふてぶてしい態度は実にヤツらしいなあ(w
予想もしなかった始球式のやり直しを向かえた彗介くん。覚悟を決めます。
「投げてやる!!」
夏門のように、ゾーン(集中力を高めるため、帽子を深くかぶる行為)に入ると、
魂を込めた渾身の一級を放つ!!
ところが力み過ぎてボールは大暴投!!
あさっての方向にトンで、ワンバウンドしてしまいました。
しかしそれでもフルスイングで答えてくれる蕪木。
すげー。ちゃんと空気読んでるよ。
いい人だ、実にいい人だー!!
お客さんは大爆笑。彗介くんもガックリと肩を落としますが、駆け寄ってきた秋葉は…。
「いいッ!!ナイスボール!!
魂込もってるのがビンビン伝わってきたっつーのッ!!!
ボールはハートで投げるんだぞ!それを忘れるなよ彗介!!」
秋葉、満面の笑み!!
そしていつの間にやら彗介くんの名を口にしている秋葉ですが…バックスタンドの電光掲示板には、デカデカと彗介くんの名前が。
なーるほど。ちゃーんとその編も見てたのね。
そしてそんな彼をオヤジやチームメイトが感激の涙を流して、彗介くんの魂のこもったピッチングを賞賛。観客からも拍手喝采。
一度は野球を辞めようと思っていた自分に、こんな温かい声援が…と、感激する彗介くんなのでした。
マウンドから降りた彗介くんを向かえたのは、レッドソックスの志堂監督!!
「立派な始球式だったぞボウズ!どうだ?野球は好きか?」
「はいッ!!!」
うわああ。この時の志堂監督の笑顔がたまらんなあ。熱いぜ。熱すぎるぜー!!
そしてさらに、彗介くんの頭にポンと手を置いた男が。見上げると、そこに立っていたのは…。
浅野夏門!!
そして右手のポーズは「レッツプレイツー」
それは一度は野球を辞めようとした少年に、
「レッツプレイツーッ」(もう一回やろうゼ)と元気付けているように見えて…。
敢えて言葉で語らず、ポーズだけで気持ちを表すこの描写が素晴らしいですね。
(そうだ、もう一度…ボクはもう一度野球をやろう!!
レッツプレイツーだ!!)
うおおおおおおおおお、やっぱりいいなーワイルドリーガーは!!やっぱりこの漫画は面白いゼ!!
ちなみに来週からは渡辺センセの新作野球漫画「OUT PITCH」(アウトピッチ)が連載開始となるのですが、敢えてKAJIMEはこう言わせて頂きます。
レッツプレイツーッ!!
(第二部もやろうゼ!!)