デトロイト・メタル・シティ TRACK39「SATANIC EMPEROR.8」


 メタルの祭典「サタニック・エンペラー」に参戦することになったDMC。準決勝では打倒DMCに燃えるスカトロメタルバンド・デズムに貫禄の違いを見せ付けて完勝するのでした。



 デズムとのライブの素晴らしさに「最高に濡れたわ」と、ご満悦のシャッチョさん。決勝戦に向けて、今頃DMCの楽屋は殺気でみなぎっているに違いない…。


 そう思い、DMCの楽屋に向かうシャッチョさんですが、目の前に根岸らしき人物を発見。


「根岸テメェ、こんな所で衣装脱いで何してんだよ!!
次はヘルヴェタだ、ウロウロしてねえでさっさと着替えろ!!」


 しかし根岸はあろう事か、シャッチョさんの言う事を完全にシカト。
 怒り狂ったシャッチョさんがイキのいい左フックを放ちますが、それをヒラリとしゃがんでよけると…。


 


ええーっ!?



 ゴボウの突然の謀反に不意を突かれたシャッチョさんはヒザから崩れ落ちてダウン。
 それにしても、ずいぶんと腰の入ったローキックだこと。


 そして無言で立ち去ろうとする根岸。シャッチョさんはナイフをブン投げますが、ナイフは根岸の左腕をかすめただけ。結局そのまま物影へと消えて行きました。


「ファーック、どういうつもりだアイツ…フイをつかれたわ」



 もちろんこのままではシャッチョさんの怒りは収まりません。楽屋に乗り込んで、ハーブティ飲んでくつろいでいる根岸に対して「ファッキントッシュ!!」と真空とび膝蹴り!!そしてマウントポジションからの殴打と、華麗なる殺人コンボを叩きこみ、圧倒的な戦闘能力の高さを見せ付けます。


「てめぇ、デズムを殺ったからって調子にのってんじゃねえぞカス!
ファックファックッファックおらファック
さっきのは油断してたんだよ!!ヘルヴェタの前に死なせてやんよ!!」


 しかし、シャッチョさんが根岸の左腕をめくってみると、あるはずのナイフのかすり傷がありません。

 そう。根岸は本当にここでハーブティー飲んでくつろいでいただけだったのです。


「ワァイ?じゃあ、さっきの根岸は一体…」


 個人的には、ここでシャッチョさんに「役立たず」呼ばわりされて、ショックを受けてるジャギ様萌え♪


 そんなやり取りがあったころ、ステージ上では「ヘルヴェタ」「ホラーエステティシャン」の対バンが行われていました。

 しかし主催者のケニーがステージに到着した頃には、すでにヘルヴェタがホラーエステティシャンをつるし首にして、瞬殺しちゃってました。


 そしてヘルヴェタは演奏中に“予言”を行い始めます。


“月を刺す狂音の祭典
そびえ立つ憎悪のふもと
深く黒き狂えし者共が血の誘いにのる”


 ヘルヴェタは予言めいた曲歌い、それを聴いた狂信的ファンに実行させるというスタンスを持ったバンド。果たして今回の曲を聴いたファンたちは…。


「うおー始まったぁ、ヘルヴェタの大予言
第72章5節“破滅”だぁ―――」
「解読しろぉー、“狂音の祭典”とはサタニック・エンペラーのこと」
「サタニック・エンペラーは深く黒き俺達の手で
破壊される事を予言されてるんだー」


 ヘルヴェタの過激なパフォーマンスにすっかり興奮しちゃってるファンたちは「殺っちまえー、血の誘いにのれ――」と、乱闘をおっ始めます。


「うおー、本当に予言どおりだー」


 その後もヘルヴェタの予言にのせられたファンたちは、ステージにガソリンを撒いて火をつけるわ、ポアゾンなどの祭典に参加したバンドのメンバーを襲いだすわ、ファン同士で乱闘騒ぎになるわで、たちまち暴動に発展。


 


 ↑デズムを守るため、蟷螂拳の構えでファンの前に立ちふさがるおやっさん


ちょwwwwカッコよすぎ(w



(サタニック・エンペラーにヘルヴェタを呼ぶ…
私はとんでもない事をしてしまったんじゃ…
こんなハズじゃなかった、もう誰の手もつけられない
パパごめんなさい、私はこのフェスを成功させる事は出来なかった…)


 シャレにならない事態になってしまい、ショックを受けるケニー。
 このままサタニック・エンペラーはヘルヴェタによってメチャクチャにされてしまうのか…?


「テメー等、DMCが出てくる前に暴れてんじゃねぇ――」
「ウルセー、予言でDMCも死して満月に逝く事になってんだ」
「バカヤロー、テメェら、あの月の模様を何だと思ってんのか」
「ああん、月にはウサギだろーが」


 


「バカヤロー、あれはクラウザーさんがウサギを犯ってる所なんだー」
「満月はクラウザーさんのラブホ的な物なんだー」
「降臨する前は月のウサギで一発ヌクんだよ!!」


 そう。みんな分かっていました。このピンチを救える者は…。


DMCしか…クラウザーさんしかいない!!


 DMC信者だけでなく、他のバンドのファンたちもクラウザーさんを待つ「ゴートゥDMC」コールが、会場内に撒きおこるのでした。



「うう…もうイヤだ
僕は何も悪いコトしてないのに暴力振るわれて…
下北で買った、あのマグカップも大切に使ってたのに…」


 …しかし肝心のクラウザーさん…というか根岸は、シャッチョさんから身に覚えのない暴力を受けて、すっかり戦意喪失しちゃってます。


「ファッ〜〜〜ク、だから間違ったって言ってんだろ!!さっさと準備しろよ」
「結局、社長は僕を殴りたいだけなんだ…
僕でストレス発散してるだけ…」


 あーあ、せっかくそこそこやる気だったのに(w



 そこへケニーが楽屋にやってきて、DMCに今すぐ出演して欲しいと言い出します。


「クラウザー、あなたの伝説のギターを手に入れる予言もヘルヴェタは始めたわ」
「ギターならそこにあるので持ってっちゃって下さい…
コチラの都合で僕は出演する事は出来ません…」


 すっかりしおれたゴボウ男の発言に、ケニーは「バカ!」と頬をひっぱたき、活を入れます。


「聞いて…このアナタを呼ぶ声……
各バンドのファンたちがクラウザーの降臨を待っている…
サタニック・エンペラーはアナタの音楽を必要としているの…」


 その言葉を聞き、そして楽屋にも聞こえる「ゴートゥDMC」コールの大合唱を耳にして、根岸はハッとします。


 皆が自分の音楽を必要としてる!!
 誰も待ってくれていない音楽(おしゃれポップ)と、待ってくれている音楽(デスメタル)…。今やるべきなのはどっちなのだ…?


(分かってる……僕がやるべき音楽は…


デスメタルだ!!)


 ついにやる気を取り戻したクラウザーさん!!

 ヅラをかぶり、悪魔のギターを手にして、マントをひるがして臨戦態勢へと入るその勇姿はカッコよすぎてもうビチョ濡れよ!!



 と、そこへ、相川さんからの電話が入ります。根岸は思います。
 今なら本当の事が言える。
 たとえ嫌われたとしても、本当のことを包み隠さず言おう…。それが真実の姿なのだから。


「相川さん、驚かないで聞いて欲しい、僕が今やってる音楽はね」


「あー、今音楽やってんだ、ちょうど良かったー
今、あのフリマのメンバーであのままオールでカラオケ来てんだよー
オザケンのメドレー入れてるから
根岸くん、ラブリーが来たら一緒に歌ってよー
昔歌ってくれた根岸くんのラブリー、好きだったんだぁ」


ちょww空気読めこのメス豚!



 そして会場ではヘルヴェタの予言で大乱闘の真っ最中。
 クラウザーさんはまだ現れないのか…?とその時!!


「出たー、我らが魔王、クラウザーさんだー」
「なんか最高に猟奇的だー」


 


相川さんと電話しながら、オザケンの「ラブリー」を歌いつつ、腰をクネクネと怪しく動かしてステージに現れたクラウザーさんなんだかものすごく不気味だー(w



 ともあれ、コレでついにDMC VS ヘルヴェタの決戦の舞台が整いました。

 しかしその時、観客席にいたシャッチョさんは、ヘルヴェタのボーカルの左腕から血がにじんでいるのを発見します。


「アンビリーバボ…これは大洪水の予感だわ」



 はたしてクラウザーさんはヘルヴェタの巻き起こした混乱を沈めることが出来るのか、つづく。



若杉公徳先生の巻末コメント
「酔うと女を殴るクセがあります。」