ワイルドリーガー外伝 「FIRST PITCH」

 今ではすっかり鳴りを潜めた「コミックバンチ」ですが、創刊当初はまさに「黄金時代」でした。


 城山三郎先生原作の同名小説を、ながいのりあき先生が大胆にアレンジした熱い経済漫画「男たちの好日」


 当時の暑苦しいバンチに萌えの花を添え、なおかつ深い話を作り上げた「ガウガウわー太」(現在は「コミックREX」にて続編「ガウガウわー太2」連載中)などなど…。


 そして、新進気鋭(当時)の渡辺保裕先生が描く、「熱い」が100個ぐらいつくような、荒らぶる魂の野球漫「ワイルドリーガー」。

ワイルドリーガー 1 (1)
渡辺 保裕
新潮社 (2001/10)
売り上げランキング: 102663


 当時バリバリのバンチっ子だったKAJIMEの心を掴んで離しませんでした。



まあ、こんな漫画です。



 その「ワイルドリーガー」が、外伝の読み切りとして帰って来たッ!!
 これはもう取り上げないわけには行かないゼ!!ってなわけで、ものすごーく久々にバンチ買ってきました(w


 いやー、いい意味でも悪い意味でも変わってなくて、ある意味安心したぜ(w



 さて、今回の読みきりは、 「京都スターズ」との11回戦。満員に膨れ上がった「東京武鉄レッドソックスのホームグラウンド「武蔵野フィールド」で、ひとりの野球少年が、始球式を行うべくピッチャーマウンドに立つところから始まります。


 ちなみに対戦相手の「京都スターズ」は、渡辺センセが別冊漫画ゴラクで連載していた野球漫熱球時代に出てきたチーム名。

 諸事情により実名球団が使えないので苦肉の策…といったところですが、思わぬところでの再登場にちょいと感激(w

熱球時代
熱球時代
posted with amazlet on 07.03.23
渡辺 保裕
日本文芸社 (2004/12/09)
売り上げランキング: 485078


 なので、打席に立っているバッターも、見た目が似てることから、「熱球時代」に出てきた蕪木平(かぶらぎ たいら)選手だと思われます。

 なんだかものすごく局地的だけど、嬉しいファンサービスだゼ!!


 コミックス「熱球時代」P60より



「しっかりな」
「少年よ、頑張るのだ!」


 「ワイルドハンズ」の友部さん、「ロングトレイン」のガルさんに励まされ、ドキドキした面持ちで始球式を務めるのは、公認ファンクラブの「Rソックスキッズ」から抽選で選ばれた、武蔵野市の小学6年生・吉留彗介(よしどめ けいすけ)くん。


 どっかで聞いたコトがあるなーと思ったら、実はこの少年、「ワイルドリーガー」の第1巻で、主人公の浅野夏門から、レッドソックスの野球帽に「男は黙ってレッドソックスというサインをもらってた、あの少年でした。
 ていうかオヤジのツラ見て思い出しました(w


 そのオヤジは息子の彗介に熱い声援を送りつつ、周囲のファンに「私の息子なんですよ――ッ!!」などと自慢しまくっています。


 まったく、とんだ親バカです。



 しかしそんなオヤジとは裏腹に、彗介くんはある決意を胸に秘めていました。


 野球少年である彗介くん。練習では調子がいいのに、試合になるとライバルチームに打たれてばかり。自分の限界を感じた彗介くんは、チームメイトに野球を辞める事を告げていたのでした。


 しかし、その日の夜、自宅に始球式の当選通知が届きます。オアyジは息子が始球式に立つ事をまるで自分の事のように喜び、はしゃぐのでした。



「ボクのラストピッチが秋葉さん相手なんだ…
ボクはこれで満足だッ!!」


 キャッチャー秋葉のミットめがけて、抜群のコントロールの投球を見せる彗介くん。ボールは「スパァン!」と心地よい音を響かせてミットに収まり、観客からは大歓声が送られます。オヤジもバンザイです。


(ふぅ―――っ、最後にいいボールが投げられて良かった……
これでボクの野球も終わりだ、さよなら野球…)


 帽子を取ってペコリとお辞儀をし、満足の行く投球が出来て悔いのない表情を見せる彗介くん。そんな彼に秋葉が駆け寄り、記念ボールを手渡す…のかと思いきや…。


「ありがとうござ…」
「もう一球だ!!」



 



秋葉吠えた―――!!



「ピッチャーはキャッチャーの目を見て魂込めて投げろ!!
あーんな格好だけつけた様なボールじゃダメだっつーの!!」


そして「次はちゃんと投げろよな――ッ!!」と、

始球式のやり直しを要求!!


前代未聞の始球式やり直しに、スタジアムはどよめきますが「武鉄戦はこれだから…」などと言いながら、律儀に打席に立って構え直す蕪木は実に空気が読めてるなあ(w


そして、そんな蕪木とは対照的に、空気の読めない男が1人…。


 


ああ、やっぱり伊能は伊能だったか。


このふてぶてしい態度は実にヤツらしいなあ(w



予想もしなかった始球式のやり直しを向かえた彗介くん。覚悟を決めます。


「投げてやる!!」


夏門のように、ゾーン(集中力を高めるため、帽子を深くかぶる行為)に入ると、
魂を込めた渾身の一級を放つ!!
















 


ところが力み過ぎてボールは大暴投!!
あさっての方向にトンで、ワンバウンドしてしまいました。


しかしそれでもフルスイングで答えてくれる蕪木。


すげー。ちゃんと空気読んでるよ。


いい人だ、実にいい人だー!!



お客さんは大爆笑。彗介くんもガックリと肩を落としますが、駆け寄ってきた秋葉は…。


「いいッ!!ナイスボール!!
魂込もってるのがビンビン伝わってきたっつーのッ!!!
ボールはハートで投げるんだぞ!それを忘れるなよ彗介!!」


秋葉、満面の笑み!!


そしていつの間にやら彗介くんの名を口にしている秋葉ですが…バックスタンドの電光掲示板には、デカデカと彗介くんの名前が。

なーるほど。ちゃーんとその編も見てたのね。



そしてそんな彼をオヤジやチームメイトが感激の涙を流して、彗介くんの魂のこもったピッチングを賞賛。観客からも拍手喝采。


一度は野球を辞めようと思っていた自分に、こんな温かい声援が…と、感激する彗介くんなのでした。



 マウンドから降りた彗介くんを向かえたのは、レッドソックスの志堂監督!!


「立派な始球式だったぞボウズ!どうだ?野球は好きか?」
「はいッ!!!」


 うわああ。この時の志堂監督の笑顔がたまらんなあ。熱いぜ。熱すぎるぜー!!



 そしてさらに、彗介くんの頭にポンと手を置いた男が。見上げると、そこに立っていたのは…。



 


浅野夏門!!


そして右手のポーズは「レッツプレイツー」


それは一度は野球を辞めようとした少年に、


「レッツプレイツーッ」(もう一回やろうゼ)と元気付けているように見えて…。


敢えて言葉で語らず、ポーズだけで気持ちを表すこの描写が素晴らしいですね。



(そうだ、もう一度…ボクはもう一度野球をやろう!!
レッツプレイツーだ!!)



 うおおおおおおおおお、やっぱりいいなーワイルドリーガーは!!やっぱりこの漫画は面白いゼ!!


ちなみに来週からは渡辺センセの新作野球漫「OUT PITCH」(アウトピッチ)が連載開始となるのですが、敢えてKAJIMEはこう言わせて頂きます。



レッツプレイツーッ!!
(第二部もやろうゼ!!)