デトロイト・メタル・シティ TRACK23「HIP HOP.1」

 一種触発のインディーズシーン。猛威を振るうDMCの首を取ろうと、いろんなバンドが牙を向いておりました。

「金玉ガールズ」なんかは記憶に新しいですね。


 そして、また新たな刺客がDMCの首を虎視眈々と狙っていました。それは…。




史上最凶ラッパー「鬼刃」(きば)!!



 実は、DMC信者が鬼刃クルー(鬼刃のファンの人達)を襲撃するという事件が、鬼刃の本拠地・渋谷で起きたばかり。この事件を知った鬼刃は、韻を踏みながらのラップ調で、DMCとの全面戦争を宣言するのでした。


「オレは鬼刃、吐く言葉まさに牙
ついにこの時が来た
オマエすぐにオレの前にひれ伏す
ことになるだろうよ」


 一方、DMCクラウザーさん…の世を忍ぶ仮の姿である根岸は、ライブ終了後にひとりでファミレスに来ていました。
 自分の音楽がやれないのなら、故郷の大分県犬飼町に帰ろうかなあ…などと考えながら店内に入ると、なんと、小学校時代の同級生の木林くんとばったり再会!!



キバヤシ」と聞くと、どうしてもMMRのあの人を連想してしまいますが、関係は無さそうです(な、なんだって−)


 根岸の小学校時代の一番の親友であった木林くんは、太っちょで心優しい、引っ込み思案なうなぎ屋のせがれでした。少なくとも根岸の知る限りでは。


 しかしそんな木林くんに、おっかなそうなお兄ちゃんが声をかけてきました。


「鬼刃さん、ドリンクバー取ってきました」
「しかし、昨日のライブサイコーでした!!」
「決戦前夜ってカンジで」


 それを聞いて驚愕する根岸。そう。木林くんがあの史上最凶ラッパー「鬼刃」だったのです!!


 木林くん…じゃなかった、鬼刃はい、自分のことをニューヨーク育ちだと、のたまったりと、まるで人が変わっておりました。大分のうなぎ屋の息子のクセに。



 さて、先ほども振れましたとおり、鬼刃クルー達はDMC信者とモメていました。鬼刃クルーのひとりが、DMC信者を待ち伏せして襲撃しようとしているという、キナ臭い話が飛び出したので、根岸は慌てて鬼刃たちを止めようとします。


「木林くん、暴力とかよくないと思うよ
昔キミも同級生におなかツネられて泣いてたじゃない」


 すると、途端に取り巻きの鬼刃クルー達が怒り出し始めました。


「テメェ、今、鬼刃さんをディスったな〜〜」
「いくら知り合いでも許さねぇぞ!!」


 「ディス」というのは、 HIPHOP用語で、ラップ口調で誰かをけなすという行為を現します。鬼刃クルー達は、根岸が鬼刃をデブとけなしたと、腹を立てているのです。


 しかし鬼刃はそんなことに気にも止めず、店員に、自分が注文したラザニアがまだ来ていない事を、ラップ口調で抗議しています。


「オレのラザニア、まだきてないにぁ〜
オレのおなかペコペコ、おまえオレにペコペコ」



「フォー。鬼刃さんのフリースタイルクレームラップだ〜」


 しかし、根岸が「そのダジャレも全然面白くないし〜」と言い出すと、鬼刃クルーたちは「テメー、完全にディスったなー!!」と、とたんに怒り出したり。


 なんか、この編のノリはDMC信者と変わらないなあ。鬼刃クルー。



 そんなやり取りをしている間に、鬼刃クルーの一人、元プロボクサーのリョージが、DMC信者を追い詰めたという連絡が入り、鬼刃たちはファミレスを出ていきます。しかし、去り際に鬼刃が根岸に…。


「ねぎっちょ、オレは昔の自分を捨てた
鬼刃こそが本当のオレなんだ
あんな態度とってすまなかったな
オレは勝ち上がるぜ!!」


 おお、さっきまでの非礼を詫びてる!!内面はやっぱりいい人なのか鬼刃!!カッコいいぞ!!



 でも、結局鬼刃の標的が根岸(クラウザーさん)であることには変わりがないのが悲しいところではあるのですが。


 さて、鬼刃たちが現場に駆けつけると…リョージは返り討ちにあっていました。



レッド強すぎだよレッド。
さすが、オシャレ四天王の一角を、正義の鉄拳でSATSUGAIしただけのことはあります。


 この騒ぎを静めるには、もはや根岸がクラウザーさんになって彼らを止めるしかありません。

 しかし、ライブ終了後に衣装をクリーニングに出してしまった為、今根岸が持っているのは、ヅラとメイク道具のみ。


 そこで、根岸が考えついたのは…。




クラウザーさん、生首で光臨!!


 もっとも、衣装がないからクルマの向こうから首だけ出してるというだけなのですが、DMC信者達はすっかり生首だと信じ込んで、クラウザーさん「下等動物ども、醜い争いをやめるのだ」という言葉に素直に応じるのでした。


 しかしここで鬼刃が、ただ車の向こうだわ煮立っているだけだろと、至極最もな指摘をしたものだから、さあ大変。


レッド「ああん!?じゃテメー、車の下から見てみろ、足はねぇハズだ!!」


で、ホントに鬼刃がクルマの下を覗き込んじゃったので、クラウザーさんは慌てて足を隠してやり過ごします。



凄いプロ根性だよクラウザーさん!!



 で、車が走り出しちゃったので、クラウザーさんアゴを乗せたまま、鬼刃にステージで決着を付ける宣戦布告して、走り去ります。鬼刃はこれを受けて鬼刃クルーを全員集めて、次のDMCのライブに殴りこみをかけると言い出すのでした。


 次回は、巻頭カラーでDMCと鬼刃が激突だ!!



若杉公徳先生の巻末コメント
「今回の離婚でバツが7つになりました。」