デトロイト・メタル・シティ TRACK13「MASOCHIST」


 最近のDMCのライブには、欠かせない一人のライブパフォーマーがいます。名は梨元圭介。ついた異名が「資本主義の豚」
 口にボールギャグをつけられ、変態的なカッコをされて、毎回クラウザーさんに虐められているおっさんです。



 クラウザーさんの世を忍ぶ仮の姿である根岸は、そんな梨元さんに対して、申し訳ない気持ちでいっぱい。ライブが終わって「梨元さん、スミマセンでした」と謝罪すると、梨元さんはまったく怒らず、むしろにこやかに笑って、こう返答するのです。


「大丈夫っス大丈夫っス、私M男ですから」


 そんなある日。DMCのライブを終えた根岸がコンビニに立ちよると、なんとそこには先ほどまでライブで一緒だったはずの梨元さんが、コンビニの店員として働いているではありませんか!!梨元さんは離婚していて子持ち。DMCのライブパフォーマーだけでは食っていけないようです。生活が大変なんだ…と根岸は大きなショックを受けます。しかし、ショックを受けるのはコレだけではありません。
 梨元さんがバイトの店員の女性に話しかけられて、恥ずかしそうな、でも嬉しそうな表情を見せていたのです。それは根岸にとって初めて見る梨元さんの表情でした。

 その後、梨元さんのバイトが終わった頃を見計らって、根岸はコーヒーを振舞い、公園のブランコで梨元さんと言葉を交わします。梨元さんは先ほどの女性・上村さん(26歳・バツイチ)に密かな恋心を抱いていました。


「しかし私には彼女を魅了できるものが1つもない
根岸さんみたいにカッコよくギターも引けないし、歌もうたえない


 すると根岸はこう提案します。「だったら彼女をライブに呼んで、カッコ良い所を見せてあげましょう!!」と。いつもの「資本主義の豚」ではなく、梨元さん個人としてライブを行い、彼女のために曲を作り、歌い上げる…。これでハートをゲットだぜ!!という作戦…。ふだん梨元さんに申し訳ない気持ちがあったというのもあるのですが、それ以前に、梨元さんには幸せになって欲しい…。そう根岸は思ったのです。うーん、泣かせるなあ。


 というわけで、根岸は一度だけでいいから梨元さんにスポットを当てて欲しいと、シャッチョさん相手に交渉。シャッチョさんはちょうどシャブを打ってラリっていたからなのか、意外にもあっさり了承。梨元さんも曲を作り上げ、いよいよライブ当日を向かえます。


 そして…上村さんも見守る中、ついにライブスタート。ライトアップして現れたのは、エルビス・プレズリーみたいなカッコをして、精一杯カッコよく決めた梨元さんの勇姿!!


「うわあぁぁ、なんだアレは
アレは資本主義の

資本主義の英雄だぁー!!」


 いつもの「資本主義の豚」の醜い姿とは正反対の、ビシッと決まった梨元さんを前にして、さしものオーディエンスも驚きを隠せません。
 そして予想外に盛り上がった観客たちを前に、DMCのファーストシングル「SATSUGAI」を歌い上げる資本主義の英雄(梨元さん)。これにはオーディエンスたちも大喜びですっかり楽しんでいて、ライブ前は「大丈夫かよオッサン」と心配していたベースのジャギ様も「意外と盛り上がってるじゃねぇか」と英雄の健闘を讃えます。
 そして、今回はギターとコーラスという脇役に徹しているクラウザーさんも、ついついテンションが上がって行きます。


(へっ、客も楽しんでる、いいぞ、やるじゃねえか梨元!!
よしっ、次はテメーの曲をあの女にブチ込んでやれ!!)


 そして会場の雰囲気が最高潮に達したところで、英雄はこの日のために作り上げた、取って置きの曲を歌い上げるのです。上村さんに想いを届けるために。

「家路」
作詞;梨元圭介


もぉ 忘れよぉ
お前の悲しみ オイラ全て 分かっているからぁ

割れたガラスを拾うように
ただ2人抱き合おう

いつの日か家路 歩めるよぉ
お前と共に 歩めるよぉ


 英雄の曲に、「ひょっとしてこの曲、私のため…」とうっとりする上村さん。どうやら上村さんに英雄の想いは届いたようです。


 しかし、あまりにもDMCとはかけ離れた演歌調であるこの曲に、オーディエンスたちは戸惑いを隠せず、会場の雰囲気もだんだんドン引き状態に…。
 するとここで、見かねたクラウザーさんが英雄に接近して…!!
















ええ――――――っっ!?


 やっちゃったよ!!クラウザーさんやっちゃったよ!!お客さんのテンションをこれ以上下げないためには確かにこれしかないのですが、これじゃあんまりだ(w


 突然マイクを口に突っ込まれた英雄。すると「M」のスイッチが入ってしまったのか、おしりを突き出し「もっと下さい」とクラウザーさんに要求!!
 この瞬間、英雄はいつもの豚に逆戻りしてしまいました。梨元さんの性癖を目の当たりにして、上村さんは困惑気味。でもオーディエンスは皮肉にも大盛り上がり!!

 そして「豚」の要求に答えるべく、クラウザーさんは右手を高く挙げるポーズ。


クラウザーさんが手を挙げた!!出るぞ―――!!」


 そして、いきなり豚の尻っぺたを「スパーン!」とひっぱたき始めたクラウザーさん!!豚はスパンキングされて「オゥオゥ」歓喜の雄たけびをあげます。


「貴様の歌は…これだろうがぁー!!」







疾きこと風の如く!!


徐かなること林の如く!!


侵掠すること火の如く!!


叫ぶこと豚の如し!!








        SPANKING


スパンキン


        FURINKATON


風 林 火 豚!!



 なんかものすごいのキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!   
クラウザーさんが豚をスパンキングしている腕の動きが早すぎて、まるで「北斗百列拳」みたいだぜ!!グロテスク!!



「スゲェ、今日は100オゥ越える勢いだ―――!!」


 そして会場に来ている上村さんに対して、「あの娘(こ)をレイプ」を歌い上げるクラウザーさん。しかし豚の本性を知ってしまった上村さんは「もう最低!!」と、逃げるようにして帰っちゃいましたウワァァン・゚・(ノД‘)・゚・

 しかしそんな事とは露知らず、豚はクラウザーさんの歌に合わせて、クイクイと腰を振ってノリノリ状態だったのでした…。

 

 そして翌日。梨元さんにライブを見た上村さんの感想を尋ねる根岸。しかし上村さんは、ショックのあまり、コンビニのバイトを辞めちゃっていました。そりゃそうだよなあ、あんなの見せられちゃ(w

 しかしそれを聞いた根岸は大ショック。自分のせいだ、自分がテンション上がって梨元さんの歌をメチャクチャにしてしまったから…と謝罪しますが…。


「根岸さんのせいじゃありません…
根岸さんは根岸さんの仕事をして、私は私の仕事をしただけです

私は資本主義の豚の仕事に誇りを持ってますから」

「でっ、でも」












「大丈夫っス、私M男ですから」



 うわあ…梨元さんの背中が超カコ(・∀・)イイ!! 自分の仕事に誇りを持っているそのスタンスに感動した!!根岸もそんな梨元さんの背中がものすごくカッコよく見えたようです。

 しかし、自分の仕事には誇りを持てそうに無いなあと改めて思う根岸なのでした。ちゃんちゃん♪



若杉公徳先生の巻末コメント
「えりちん先生、まるでマンガにレイプされた気分でした。」