[セーラー服心中」


 さといちさんからプレゼントされました、山崎みちよの「心中シリーズ」三部作。今回はブログ上で、「セーラー服心中」を、ごく簡単に紹介してみようかと思います。
 正直、この「セーラー服心中」は、前作の「クリスマス心中」のようにネタ満載というわけでなく、ひたすら陰湿でイジメ全開な作品です。インパクト満点な部分は一箇所のみ。しかしその一箇所がものすごく強烈なわけでして…。

 なお、前回レビューした「クリスマス心中」の内容は、こちらからどうぞー。



 小2のころ父親と妹を事故で亡くした吉野沙弥(よしの さや)。貧しいながらも母親と二人暮らしでしたが、このたび再婚することになりました。お相手は母親のパート先の社長さん。同い年の義妹・豊田善美(とよだ よしみ)とも仲良く、まさに幸せいっぱい。そんな彼女は瀬川慶(せがわ けい)にひそかな恋を抱いていました。


 ところが、沙弥がみんなからちやほやされていること、そしてテストの点数が沙弥より2点劣っていたことが決定的となって、善美は激しい嫉妬心を抱いてしまいます。


 そして沙弥はこのときから、善美から執拗な陰湿なイジメを受けてしまいます。たとえば、テストの最中にこっそりカンニングペーパーを入れられて、カンニングをしたという疑いをかけられてしまったり、クラスメイトの財布を盗った犯人されてしまったり…。そして慶に恋心を抱いた善美は、なんとか沙弥と引き離して、自分に振り向かせてしまおうと、さまざまな工作を行ったり…。

 気がつけば沙弥は、クラスメイトからは一転して嫌われるようになり、善美のパパンも沙弥やママンに厳しく当たるようになっていき、次第に追い詰められていく二人。


 そして心労&過労がたたって沙弥のママンは心臓発作で死亡。しかし善美や善美のパパンは墓参りにも参加せずに、すぐさま愛人を作って、その愛人も家に住み着くようになってしまいました。その愛人も、沙弥のためにママンが残した100万の貯金を勝手に引き落として、勝手に競馬で使ってスッちまうわ、とんでもない女でした。心のよりどころのママンが消えて、三人からいじめられ、ますます追い詰められる沙弥。そんな彼女の心の支えは、慶ただひとり。皮肉にもみんなから迫害を受ければ受けるほど、二人の愛は深まっていくのでした。


 というわけで、なかなか慶は善美に振り向いてくれません。そこで善美は最後の手段に出ます。慶の会社が負債を抱えて、善美のパパンに援助を申請してきたことに目をつけて、善美のパパンが慶の会社に援助をする代わりに、善美と慶を政略結婚させてしまおうという、とんでもないものでした。

 当然慶にとっては望まない結婚なわけなのですが、そんなものは見えやしねーということで、話はトントン拍子で進行。クラスでも「婚約おめでとー」などともてはやされてしまう始末です。当然沙弥は蚊帳の外なわけですが。


 そして、一度はこの政略結婚に応じるように息子に働きかける慶のパパン。しかし、息子の慶が「矢嶋慶」という人物の本を愛読していたことを知ると、突然考えを一転。善美のパパンたちの前で、「この話をなかったことにしてください!!」と、言い出してしまうのです。

 そして、息子に自らの過去を打ち明けるパパン。実は彼自身も「矢嶋慶」という人物の本の愛読者だったのでした。そして、「矢嶋慶」は恋人が大富豪の息子と無理やり政略結婚をさせられ、無理やり引き裂かれた末で命を絶つ…。最期まで愛を貫き通した生き方をした…。そういうことを慶に語りだすのでした。

 そして、父親もまた、周囲に結婚を反対される中、駆け落ち同然で家を飛び出し、さまざまな困難を乗り越えて結ばれたのでした。この本の作者である「矢嶋慶」のように生きたいという一心で…。そして、生まれた息子にもその想いをこめて、「慶」と名づけた…というわけです。

 そして数奇な運命なのか、息子もまた、自分と同じような状況下に置かれている…。そしてパパンは息子の慶に高らかに言い放ちます。


「慶っ…どうしてためらわず沙弥さんの所へ行かなかった?
お前は甘いんだ…しかしその甘えは弱さでしかない!!
愛は何物にもかえられないんだ!!
お前の愛は終わっていないっ、生きているんだ!!」

 かつて自分が愛を貫いたように、息子にも愛を貫くようにと熱弁を奮うパパン。なんかものすごくカッコいいです。熱いです。そしてパパンも叫んでいるうちにヒートアップしちゃったのか、暴走はとどまるところを知りません。取り出したものは…ゲゲェ――っ!!出刃包丁!?


「いいか慶!!よく見ておけ!!
これがっ、愛に生きた…」



「男の死にざまだ!!」


 ああーっ、やっちゃったよ!!自分で自分を刺しちゃったよ!!やりすぎだって!!

 そして、パパンは自分自身にかけた生命保険で借金を返済するように、そして息子に愛する恋人の元へ向かえと言い残して、息を引き取ってしまうのでした。オ、オヤジ――っっ!!

 つーか、自殺して保険金が下りるんだったら、「クリスマス心中」に出てきた、有紀の両親(諸悪の根源。娘に2億円もの借金残して勝手に首つって自殺しました)はどうして自分らに保険金かけて死ななかったのかと。つくづく不幸モンな両親ですなあ(w


 ええっと。もう、このカッコいい親父の死にざまを見せつけられてしまったら、もうこの後のストーリーなんてどうでもよくなっちゃうのですが、結論から言いますと、結局沙弥と慶は結ばれます。
 そして、善美は慶を手に入れることができなかった悔しさから暴走して、リストカットした後に自宅(札束)に灯油まいて火をつけて、命を絶とうとします。善美のパパンと愛人は、巻き添えを食らった形で焼死です(w 
 で、燃えさかる炎の中から沙弥たちが善美を救い出し、沙弥が輸血をして一命を取り戻すのですが、善美はみんなの前で自分が黒幕だったことを暴露するなど、言いたいことを勝手にのたまった挙句、病院の屋上から飛び降りて、勝手に死んでしまいました。なんか救いようのない結末だこと…。


 いずれにせよ、慶のパパンの壮絶な命の絶ちっぷりは、「北斗の拳」の拳王様ことラオウ様に匹敵する最期でした!!彼の壮絶な死にざまだけは、未来永劫後世に伝えるべきじゃないかなあ…なんて思ったり。なので自分が取り上げちゃいましたよ♪